Bataさんの一喜一憂

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行き当たりばったり小説:神火 #4 rev.1

前回は島の説明で大半を使ってしまいました。物語の背景を明らかにしていくって、かなり難しいですね。

そろそろ何か事件が起こりそうです(書いている本人もよくわかっていない。だって行き当たりばったりだから)

うまく物語が進むと良いのですが^^

#rev.1:2016/11/6
    もう少し会話している感じに変更してみました

※最初・途中から読みたい方はこちらから→カテゴリ「小説

 

神火 #4

目を開けるとパブリックベース個室の天井が見える。

授業中、強制的にログアウトされたのは初めてだ。

学生は原則教師の許可がない限り、授業中はログアウトできないようになっている。さすがに食事やトイレなども必要なので、休み時間は一時的にログアウトできるが、時間内に戻らないと早退、長時間不在になれば欠席になってしまう。

「昨日渡したAVRグラスを付けたら、急いで外に出て」
どこからかアイミの声がする。

「なんでこんなことができるんだ? 早く戻らないと早退になってしまうぞ」
昨日起こったことを考えると、このくらいは朝飯前の組織のようだし、質問にも答えてくれる気もしないが、言わずにはいられない。

「大丈夫だよ、わたしたちは今も授業受けている状態だよ」
「えっ?! でも指されたりしたら、どうすんだよ?」
技術的にVRSにいるように見せることはなんとかできると思うが、反応がなければ、すぐに加賀先生にバレてしまう。

「いざという時はアイミの姉様達がバックアップしてくれるし、万が一にも指されないから。さあ急いで」
意味不明だが、授業に戻るという選択肢は与えてもらえそうもない。

昨日貰った『AVRⅢ』と書かれた碧いグラスを装着すると、右側にアイミの顔が見える。実際には存在していないのだが、なんの違和感もなく隣に立っているように見える。急き立てるようなジェスチャーを繰り返している。重い腰を上げて、パブリックベースの外に向かう。

外に出ると青色に塗られた見たことがない一人用のカートが停まっている。通常はスクータータイプなのに、これは中型バイクというデザインになっている。

「こんなタイプのカート初めて見たぞ」
シートの上に固定されていたヘルメットを付けて、またがってみると気分が高揚する。高校生が乗りたいのはこんなマシンだ。スクータータイプじゃない。

「しっかり掴まってて、飛ばすよ」
何も操作していないのに、いきなり発進した。どうやらアイミが外部から制御しているらしい。時速50~60Kmは出ているんじゃないだろうか。通常のカートの4倍以上の速度だ。確かにしっかりハンドルを握っていないとカーブで振り落とされそうだ。

「どこに向かうんだ?」
と訊いてみたが返事はない。前方、島の中央部にあるショッピングモールの方で煙が立ち上っているのが見えてきた。

「おいおい、まさか、あそこじゃないよな?! 火事ならソーマ警察の仕事だろ」
「ただの火事じゃないの。おそらく『人類同盟』のしわざ」
「人類同盟?!」
声が裏返っているのが自分でもわかる。

『人類同盟』、隕石落下の1年後から、世界各地でテロ行為を繰り返している狂信的な集団だ。『我々こそが人類であり、旧人類は滅ぶべきだ』というスローガンを掲げ、大都市で爆破などの破壊活動を行い、多くの人を殺している。それだけではなく、人類救済と称して各地から子供を誘拐しているらしい。

メンバーは全員 不思議な力を使うとも噂されているが、正確なところはわかっていない。何にしても危険な連中だ。そんな連中がいる場所に向かっているのか?!

「ア、アイミさん、それこそソーマ警察のお仕事で俺は関係ないんじゃ・・・」
「呼び捨てでいいわよ。それかアイちゃんって呼んで」
カートの横を直立不動で高速移動しているアイミはウィンクした後、真顔に戻って

「現在入っている情報によると相手は一人だけだから大丈夫よ」
何が大丈夫なのだろうか? 普通の高校生が相手できるとは思えない。

「やっぱりソーマ警察呼んだ方が・・・」
「ソーマ警察ならもう来ている。ショッピングモール付近に人が入らないように警護してもらっているよ」
「じゃ、俺は?」
「そんなの、阻止に決まっているじゃない! まどかからはタッくんが対処できるってツクヨミが予測していると聞いているよ」
またツクヨミか、はた迷惑な未来予測システムだ。

「それに、これはミコッちゃんの件に向けて、タッくんの実地訓練なんだって」
横でアイミは笑顔を見せている。ミコッちゃんって、まさか美琴の件に関係あるのか?

ショッピングモールの入口が見えてきた。

「エリア封鎖は終わっているみたいだから、思う存分戦えるよ」
「えっ?! 戦うんですか?」
きちんと確認してなかったけど、裏工作みたいなことをやるのだと勝手に思っていた。

前方にフルフェイスの紅いヘルメットに真紅のライダースーツを着込んでいる男が見えてきた。あいつと戦うのか?

「まどか、『ツクヨミ』とのリンクをお願い」
「O.K.」
と短く女性の声が入る。昨日あったまどかという女性がどこかでこの状況を見ているらしい。

少しずつ減速したカートの真正面に立つライダースーツの男は赤く燃えている鞭を右手に持っている。

男に集中していたら、いきなり目の前が赤くフラッシュ。

「なんだ?!」
カートが急停車すると赤い線のようなものが伸びてきて戻っていった。次の瞬間、ハンドルの辺りが真っ赤に溶け始める。

急いで飛び降りると、次の瞬間カートが小さな爆発とともに炎上し始めた

「わわ、わ、ア」
アイミさん?と叫ぼうとしたが、驚きすぎて声がでない。

燃えるカートの横でしゃがみ込んでいたら、今度は足下が赤く光ったので、反射的に後ろにジャンプ。

今度は元いた場所に目の前に赤い鞭が振り下ろされたと思ったら、鞭の尖端で地面が溶岩のように溶けて始めている。

「タッくん、ナイス!」
と、こちらの顔を覗いているアイミの肩越しで、男がこちらを見ている。

「ワタシの鞭を2回も避けるとは、アナタ何者ですか」


                              (つづく)

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