Bataさんの一喜一憂

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行き当たりばったり小説:神火 #5 rev.1

望んでいたことが望んでいない状況で起きるのが人生なのかもしれません。
お話も私としては急展開になってしまいました。さて、これからどうなるのか

#rev.1:2016/11/8
    少し逃げ回るところを修正してみました(こっちの方が現実的?)
    動きがあるシーンの描写がさらに難しい(技術力不足)

※最初・途中から読みたい方はこちらから→カテゴリ「小説

 

神火 #5

「まあ人に名前を聞く前に自分が名乗るのが礼儀ね。ワタシは業火。誇り高き人類同盟のナンバー22。で、アナタは誰?」

炎を纏った鞭が顔面のすぐそばで、ピシッと音を発して戻っていく。ビックリしすぎて身動きができない。

やはり人類同盟=テロリストなのか。それにしても22って偉いのか、下っ端なのかわからない。今は弱い雑魚キャラであってくれることを祈るのみ。

ああ神様、島の生活が退屈で刺激的な毎日が欲しいとか、もうお願いしません。
刺激を求めて、島の都市伝説を追いかけるなんてことも止めます。
学校に行って真面目に勉強し、食事も残さず食べて、毎日が平穏であることに感謝して過ごします。

だから、この状況をなんとかしてください、神様。

「何かにお祈りしているみたいだけど、しっかり前を見ていないと死ぬわよ」

アイミの容赦ない声がする方に目を向けると、アイミが壊れたカート近くの地面を指さしている。指先には何か短い棒のようなものが転がっている。

「早くコレを取って! 取ったらココまで来て!」

と次の瞬間、運搬用の大きなカートの影に移動して手を振っている。AVRでも瞬間移動は
できないはずだから、何かシステムをいじっているに違いない。支援って、俺に指示するだけなのか? あいつは楽でいいな、クソッ!

「アナタ、何を見ているの?」

当然だが、業火にはアイミも見えていないし、声も聞こえない。鞭を構えるゴウカの方を向き、大きな声で

「俺の名前はタ、巧だ」

と叫ぶと同時にアイミのいる方向にダッシュ、棒を拾い上げて、そのまま直進し、指定された運送用カートの影に隠れる。

業火の奴は律儀そうだから、名乗っている間は攻撃してこないと思ったら、案の定してこなかった。

「次はこっち」

アイミは大きな柱のところで手を振っている

ツクヨミからデータを貰って、攻撃地点を予測しているから、赤い印を避けて走れば大丈夫だよ」

大丈夫って、万一当たったら怪我するだけじゃすまないぞ。

「敵の攻撃範囲も計算して、安全なルートを緑で表示しておくから参考にしてね」

と笑顔でウィンクするアイミ。

「じゃあ、巧。そろそろいきますよ」

姿は見えないが、業火は戦う気満々だ。やっぱり絶体絶命は変わっていない。今はアイミの指示に従うしかないようだ。俺が生き延びれると『ツクヨミ』とやらが予測していると信じるしかない。

アイミのいる方へ走り始めた瞬間に鞭が振り下ろされ、バシッという鈍い音と共に運搬用カートが両断された。

鞭なのに切断できるなんてあり得ない。化け物か?! 人類同盟は不思議な力を使うというのは本当らしい。

こんなに真剣に走るのは人生で初めてだ。過去最高スピードは出ているはずなのに全然進んでいない気がする。1秒1秒がものすごく長く感じる。

あともう少しでアイミのいる場所に到着すると思った瞬間、目の前に赤いエフェクトが光る。反射的に地面を蹴って左後方に転がる。

目の前の地面が赤くなり、少し溶けている。危なかった。

「また避けるとは、アナタすごいね。敬意を表してワタシも本気を出そう」

本気出さなくていいですから~、と叫びたかったが、声を発する前に鞭による連続攻撃が始まった。

赤いエフェクトに従って、反射的に逃げるので精一杯。鞭の起こす風はかなり熱い。少しでもかすったら、やけどしそうだ。

「タッくん、こっち~!」

少し後ろでアイミが手招きしている。確かに鞭の攻撃範囲から急いで離れないとやばそうだ。示された緑のルートをアイミの方へ走る。

アイミのいる建物の影に身を潜める。近づいてきた業火の攻撃が壁に当たり、バシュッ、バシュッと連続して小さな音を立てる。

「なんか、あいつの攻撃ってリズムがないか?」
「業火は何かの曲に合わせて攻撃しているみたい」

アイミが業火の声を拾って耳元で再生してくれる。これはアニソンですか? 雰囲気と違ってアニオタなのか?!

でも、この曲なら知ってる。あいつと同じ歌を口ずさんで攻撃のリズムに合わせて移動すれば勝機はあるかもしれない。

「なんか行けそうだね。じゃあ、次はこっち~~!」

気がつくとアイミは離れた場所で手を振っている。大きくカーブした緑のルートも表示されている。

業火の歌に合わせて走り始める。やはり、このタイミングなら連続して攻撃して来ない。

瞬間移動するアイミを追いかけて、建物や柱の影に隠れつつ、緑のルートを業火の攻撃を避けて走り続ける。

こっちは死に物狂いなのに、それほど真剣には走っていない様子の業火にどんどん間合いを詰められる。

「攻撃が当たらないからといっても、逃げ回っているだけでは、この業火を倒せませんよ」

悔しいが反論できない。おっしゃる通り攻撃手段もないので、今はただアイミを信じて逃げるだけだ。

緑のルートの先に『GOAL』の文字が見えてきた。え? 目的地はショッピングモールの中心「水の広場」?

水の噴き出る無数の穴が開いていて、子供達が水遊びできるようになっている場所だ。攻撃を避けるための遮蔽物も何もない、ただ広いだけの空間。

「おやおや、そんな何もないところで立ち止まって、どうするつもりですか?」

業火の言う通りだ。

「的にしてほしいのであれば、お望み通り、これで終わりにしましょう」

今までにないスピードの鞭が右側から迫る。避けられない。

「うぁぁ~」

意味もなく、ただ叫ぶしかできなかった。

                              (つづく)

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