行き当たりばったり小説:神火 #6
ずっと続きが書きたかったのですが、メインブログが忙しかったり、ポケモンの誘惑に負けたりして、サボってしまいました。大変申し訳ございません<(_ _)>
どんな話か忘れちゃったという方はこちらから(少し書き直しています)
主人公なので絶体絶命の巧ですが、なんとかなるでしょう^^
それにしても業火の組織のナンバー22って、偉いのか下っ端なのか全くわかりませんね
では「水の広場」での攻防の始まりです
神火 #6
もう駄目だ、と考える間もない短い時間に奇跡は起きる。パシュッという音とともに吹き出した水が業火の鞭をはね飛ばす。
「えっ?!」
「何!?」
と驚く巧と業火。
「水で私の鞭がはね飛ばされるはずがない」
と業火は鞭を連続して繰り出すが、全て水の防壁にはじき飛ばされてしまう。
「普通の水じゃないよ。ソーマ警備保障の依頼でソーマ化学が開発した特殊な硬化水だからね」
いつの間にかアイミが隣にいる。当然AVRの中だから、業火には見えないし、聞こえないが、業火に向かって自慢げに話している。
「特殊な周波数の振動を与えると硬度が上がる特殊な水。防火性能も高い消火の新兵器。私が鞭の軌道を予測して、硬化した水を噴き上げて壁をつくる。完璧な防御だよ」
とVサインにウィンクしているアイミ
「だから、水の広場に誘導してたのか」
水の広場の中心には、円形状に水の噴射口がある。普段は音楽に合わせて水を吹き出し、人々を楽しませてくれている。今は頼もしい水の要塞だ。
「でも、硬化水はそんなにたくさんないから、早めにあの鞭捌きをマスターしてね、タッくん」
と巧を見た後、業火の方を指さす。
アイミは俺のコピー能力を知っている?!
「でも、鞭がないぞ」
「さっき拾ったじゃない、その赤いスイッチをスライドして」
スイッチを入れると、どういう仕組みなのか棒の先から紐状のものがでてきて、鞭になった。スパイ映画の秘密兵器みたいだが、こんなものまで作っているのか?!
吹き出す水の隙間を狙って攻撃を繰り返している業火の動きを真似て鞭を振ってみる。
「猿真似ですか。この業火の鞭捌き、マスターできるとでも。片腹痛いですね」
と大声で笑う業火。
熟練した技は簡単にコピーできないが、しばらく動きに合わせて鞭を振っていると、どのように力を入れれば、どこに鞭を飛ばせるか、少しずつわかってきた。試しに業火の繰り出す鞭先を狙って、こちらから攻撃してみる。タイミング、速度ともに不十分なので、こちらの鞭先は空を打つのみ。
「素人のあなたの鞭で、このワタシの鞭を撃ち落とすつもりですか。無理無理」
水にはじかれる前にこちらを攻撃しようとして、速度を増していく業火の鞭。それに追随するアイミの水捌き。どうやっているのかわからないが、アイミの能力にも驚きを隠せない。
「そろそろ水切れになるから、ボーッとしていないで、早く!」
アイミに感心して動きが止まっていたことに対して、即時ツッコミが入る。
「あと2か3回が限界」
そうだ、曲!
アニソンの曲を口ずさみながら、リズムをとって、業火の動きに合わせてみる。さっきよりはタイミングも速度もあってきた。
「ごめん、タッくん これが最後」
最後の水が鞭を弾き飛ばす。その鞭の先端をねらって、鞭を繰り出す。パシッとにぶい音がして、業火の鞭の先端に当たり、さらに弾き飛ばす。
「まさか?!」
「やった!」
動揺を隠せない業火、喜びを隠せない俺。
◇ ◇ ◇
同時刻、神火島地下 研究所施設内(以前、巧が連れてこられた施設)
加賀美まどかと一人の男が巨大なディスプレイに映し出される巧と業火の戦闘を食い入るように見ている。
「始まったな」
男がつぶやく。
「ええ、始まりました」
まどかも答えるようにつぶやく。
「現在の予測変動は?」
「『ツクヨミ』によると目標分岐への移行確率は32%を超えました」
研究室内のスタッフの一人が大きな声で状況報告する。
「問題は彼が能力に目覚めてくれるか、ですが・・・」
「巧しかいないんだよ、状況を変えられるのは。今は見守るしかない」
「そうですね。でも彼を失うわけにはいきませんから、念のためバックアップは用意しています」
男の心配そうな顔を見ながら、まどかが答える。ディスプレイの中で二人の攻防が続いている。
◇ ◆ ◇
先ほどまでの状況が嘘のように、鞭を鞭で弾き飛ばせるようになってきた。でも弾き飛ばすが精一杯だ。業火の鞭は炎を纏っている。その分威力で負けている。
「くっ、なかなかやりますね、巧とやら。でも、この業火の鞭の威力までは真似できないでしょう」
先ほどは驚きを隠せない業火も冷静に戻り、余裕と自信を取り戻しつつあるようだ。
鞭を振り続けるのはかなり体力を消耗する。鞭使いとの戦闘が長引けば、体力的にこちらが不利になる。どうする?
俺にあの力があれば・・・。あの炎が欲しい。
(つづく)