行き当たりばったり小説:神火 #10
なんと3日連続でのリリース^^(でも一旦ここまでです)
行き当たりばったりなので思いついたところまでで終わります
(最初から読みたい方、途中忘れてしまった方はこちらから→「小説 カテゴリーの記事一覧 - Bataさんの一喜一憂」)
量子進化・・・、覚醒・・・、レボル・・・、物語のネタバレ的な話が続いてます。
今回も物語の背景に関する説明的なお話です^^;
神火 #10
俺自身に起こっていることを早く早く知りたかった。
「順を追って、ちゃんと説明するから急がないでね」
とまどかに制されてしまう。横でアイミも少し待ってねという顔でこちらを見ている。
「突如始まってしまった進化に戸惑う人も多かった。情報は隠蔽されているから当然と言えば当然なんだけど。自ら死を選んでしまった人もいたけど、犯罪者になってしまった人も多い。そのために世界各国で政府直属の対策組織が存在しているのよ」
なんとなく理解できるような気がする。俺も話を出来る人もなく悶々と悩んでいたら、おかしくなってしまうだろう。
「そこで進化してしまった人、進化する可能性のある人をさらに研究する必要性が生じたんだけど、そういう人達を世の中から一時的に隔離するための施設も必要になったの」
「それが神火島?」
「理解が早くて助かるわ。政府から話が出るよりも、かなり前から神火島でレボルについて研究をしていた相馬グループはこの話を快諾し、神火島に街を造ることにしたというわけなの。」
だから研究所の上に街が後から出来たのか。
「この島には入島審査があるのは知っているでしょ。あれは進化する可能性、レボル因子を持っているかを調べる審査なの。誤解しないで欲しいけど、島民全員がレボル因子を持っているわけじゃないわ。現在は数%程度。家族の一人がレボル因子を持っていれば入島させているし、街として機能させるために様々な職業の人が必要だからね」
「でも俺は入島審査受けていないですよ」
「あなたは特別だったから。巧くん、時々物真似するでしょ」
「形態模写ですか?」
「そう、その時微弱な量子波動が出ていて、それをたまたま日本全国に配置しているセンサーが検知した、というわけなのよ」
やっぱり俺はレボルらしい。
「そろそろ昨日の話につなげるわよ。『ツクヨミ』が導き出した未来は実は複数存在していて、その一つが君が覚醒することから始まっていた」
まどかの隣で喋りたくて、うずうずしていたアイミがとうとう口を開く。
「そこで作戦を考えたの! ね、まどか、ここからは私に話させて」
「仕方ないわね。今回の成功はアナタのおかげでもあるから」
「では、ここからはこのアイミちゃんが説明しま~~す」
ずっと我慢していた反動なのか、かなりハイテンションになっている。
「タッくんの覚醒には切羽詰まった状況が必要だと考えたの。そしてそれをきちんとモニターすることも必要。モニターするには首に高感度のセンサーを埋め込む必要があったから、島伝説探求部の掲示板にそれらしい話を書き込んで、リアルでここまで来て貰いました」
得意げな顔で説明するアイミ。首筋を触ってみるが、やっぱりVRS内なので何もない。
「数日前に神火島に人類同盟が入ってきているというのは、当然島内のセンサーが検知していたの。でもこれを使えば切羽詰まった状況が作れると考えたアイミちゃんがまどかにお願いして、今回の作戦を考えました。ツクヨミがショッピングモールがもっとも可能性が高いという予測を出していたから、事前に準備をしておいて、タッくんを誘い出すことにしたというわけ」
「お前のせいで、俺は死にかけたぞ」
「いざという時のためのバックアップはちゃんと考えていたから大丈夫よ」
とまどかが割り込んでくる。
「そしてギリギリだったけど、あなたは覚醒した」
「覚醒? じゃあ俺の能力も炎なんですか?」
ずっと気になっていた質問が口から飛び出す。
「まだデータ分析中なんだけど、どうやらあなたは周囲にいるレボルの量子波動を感知して再現する能力みたいなの。簡単に言うとコピーね」
「コピー?」
「相手と同じ力を使える能力という方がわかりやすいかな」
それで業火と同じような炎が出せたのか。
「でも、これで美琴のことは大丈夫になったんでしょ?」
「それはまだわからないの」
まどかが操作するとディスプレイに次々に分岐し広がっていく道のようなものが描かれていく。
「未来は確定していないし、ちょっとしたことで元に戻ってしまうこともある。それに『ツクヨミ』の予測は複数の未来を示すことも多いし、それぞれが霧がかかっているようにはっきりしないのよ」
まどかは一呼吸おいて、
「確かなのは、まだ危機は去っていないわ」
ときっぱり告げる。
頭の中を美琴の暗い表情がよぎる。三田さんが見せてくれた黒い霧もフラッシュバックする。
「まだまだ気になることはあると思うけど、今日はそろそろ終わりにしましょう」
「そうだね、わたしたちには明日学校もあるし」
もう少し話していたかったが、すぐには飲み込めない情報が多く、自分の中で整理していく必要がありそうだ。今日はここまでにしておこう。
まどかに促されるままソファーを立つ。
「さっき通ったドアを抜ければ部屋に戻れるから、そこでログアウトしてね」
ドアを通り、振り返るとアイミが大きく手を振っている。まどかの口がおやすみと動いている。
「じゃあ、ま、うぁ」
挨拶を返そうとしたら、いきなり落下が始まった。来た時と同じようにほぼ垂直なシューターを落ちていく。帰りは上昇すると思っていたから、心臓が止まるくらいに驚いた。
シューターからはじき出されるように自分の部屋に戻ると背後にあったドアはなくなっていた。
ふと当たり前のことに気づく。
「まどかさん、VRSでのリンクだから落ちる必要は全くないじゃないですか~~!」
夜中なのに大きな声で叫んでしまったが、すぐに目の前に吹き出しが現れた。
ごめんねぇヾ(^-^;)
タッくん、からかうと面白いから(*^o^*)
次は普通に戻しておくね
オヤスミ~
アイミ
アイミの仕業だったのか。明日会ったら、ただじゃおかないぞ。
(つづく)