行き当たりばったり小説:神火 #9
なんと2日連続でのリリース^^
行き当たりばったりなので思いつくと進みます^^;
(最初から読みたい方、途中忘れてしまった方はこちらから→「小説 カテゴリーの記事一覧 - Bataさんの一喜一憂」)
自分の部屋でVRS(仮想現実空間)にログインし、やってきたのは前の日にも来た神火島の地下施設。それにしてもバーチャルな空間での移動なのでわざわざ落下する必要はないのですが・・・
今回は物語の背景に関する説明的なお話です^^;
神火 #9
到着した場所は昨日連れてこられた戦闘指令室のような広い部屋だった。少し暗い中に並ぶ複数のディスプレイにいろいろな情報が映し出されている。昼間の戦闘のせいでまだ1日しか経っていないのに遠い昔のような気がする。
昨日はリアルだったが、今晩はVRS。違いがわからないくらいリアルに再現されている。神火島のリアルと仮想現実を重ねる技術は恐ろしく精度が高い。
微笑んでいるまどかの後ろではアイミが手を振っている。
「まずは座って、ゆっくり話しましょう」
促されるままにソファーに座る。柔らかいクッションが心地よい。
小さなテーブルをはさんで向かい合った二つのソファーにまどかとアイミも座る。
「いろいろと訊きたいことがあるでしょ。機密情報もあるから全ては話せないけど、可能な範囲で説明するわ」
「なぜ街の下にこんな施設があるんですか?」
意外な質問だったようで、まどかは苦笑している。
「まずはそこからね」
まどかが操作すると、ソファーの横に設置されているディスプレイに映像が表示され始める。
「隕石落下でこの島が出来たという話は知っているよね」
隕石が落下し、火山活動が起こり、島が出来ていく様子がCGで再現されている。
「この隕石を研究するために、この施設 シンカ研究所がまず造られたの。そして研究を進めていく段階で必要になったので上に街を造ったというのが正しいかな」
ディスプレイの中では研究所らしき施設の上にパネルが敷き詰められて、平地が出来上がり、そこに街が造られていく。
「研究?」
「いきなり核心を突いてくるわね」
あまり驚いたようにも見えないまどかは説明を続ける。
「業火と戦ったから『人類同盟』のことと彼らが不思議な能力を使うという話は身を以て理解したでしょ」
あいつと戦うまでは、UFOとか宇宙人とか同じ類いのフィクションだと思っていた。
「今までの人類が持ち得なかった不思議な能力を使う人達が現れたのは隕石の落下以降なの。当然、隕石と関係があるのでは、と考えた科学者は多いわ」
「そんなことが研究されているなんて、報道もされてないでしょ」
「各国政府の監視下で行われ、公式には何も報道されていないわ。今までの人類の能力を大幅に超えた新しい人類が誕生しているなんて、普通の人達にとっては脅威でしかないもの」
そう思うでしょという顔を作った後、まどかは話を続ける。
「それでもソーシャルメディアが発達している現代では隠蔽に苦労しているのよ。実際に撮影されてしまった映像は、現実には存在しないトンデモ事件に見せかけるためにCGを使ったフィクションとしてバラエティ番組の中で紹介したりしてるわ」
「じゃあ本当に?」
「特殊な力を持つ人達は存在するわ。ここシンカ研究所は政府の認可も受け、そういう人達=新人類レボルを研究してるの」
「レボル?」
「そうレボル。能力を持った人達は隕石の落下地点の近くで生き残った人に多く、いろいろと調べた結果、体内に隕石と同じ成分、正確には量子波動が計測されたの」
量子波動? さっぱりわからない。思わず首を傾けてしまう。
「少し難しい話だから、今までの人類を構成していた物質とは全く違う高次な物質が体の中に入っていると思ってくれればいいわ」
いつの間にかディスプレイにはDNAらしい二重螺旋が表示され、その周囲に何か別の物質が集まり、三重螺旋を構成していく様子が映し出されている。
「この物質がDNAつまり遺伝子に作用して起こる現象を量子進化と名づけているわ。量子進化の結果、いろんな能力が発現していく。これを覚醒と呼んでいるの」
「量子進化? 覚醒?」
「20xx年の隕石落下は大規模だったけど、小さな隕石は今までも地球に落ちてきていたの。人類が急激に進化できたのはこの隕石によるものだという研究も行われているのよ」
唖然として何も喋れなくなった俺を見ながら、まどかは話を続ける。
「吸血鬼や狼男の伝承、童話の中にある不思議な話もいくつかはこの隕石によって実際にあった話ではないかと現在は考えられているの。覚醒で発現する能力は人によって違うけど、その人が心の奥で望んでいる力が身につくようね」
業火が望んだのは火だったから炎の力が生まれた? それに対抗できた俺のはなんだったんだ。意識していなかったが右腕を見てしまう。でもVRSにいるので龍の形に見える模様は存在しない。
「じゃあ、俺のあの炎は・・・」
(つづく)