行き当たりばったり小説:神火 #2 rev.1
まだまだ人に読んでもらえるレベルではありませんが、人に読まれるという状態が勉強になりそうなので、失礼ながら、ブログで書いてみます
数日前、芥川作家のピース又吉先生が初めは全く書けていなかったとおっしゃていたのに勇気をもらいました
思いつくまま、物語を進めてみます。多少の矛盾はあまり気になさらずに^^
少しずつ物語の背景もあきらかになっていく(予定)
#rev.1:2016/10/28
回想シーンをはさんで、流れを変えてみます
※最初から読みたい方はこちらから→「行き当たりばったり小説:神火 #1」
神火 #2
子供に戻った俺は両親に手をひかれて公園に来ていた。いつもは閑散としている公園も、その日は破壊された隕石が描く天空のショーをみようとする人であふれていた。
空にいくつも流れる光る線がとても綺麗に見える。
「きれいだね、巧」
母が優しい声で話し掛けてくれる。
「本当にきれいだ」
と母の方を向いて話す父もいる。
仕事が一段落したという父が母と俺を連れ出してくれた。最初はテレビで見れば十分なのにと文句を言っていた母も満足そうな顔している。親子三人で過ごす久しぶりの楽しい時間。
でも楽しい時間は長く続かなかった。突然、警報音が鳴り響く。
「隕石の一部がこの公園に落下するとの予測が発表されました。ご来園の皆様、落ち着いて公園の外へ避難してください。繰り返します。隕石の一部が・・・」
周囲から楽しげな話し声が消え、一瞬ざわついた後に公園内の各所で悲鳴なような声があがる。
急いで逃げようとする群衆の中、両親が俺の手を引っ張って逃げようとするが、子供の俺は速く走れない。そんな俺を父が抱きかかえた時、俺の目に光の矢がこちらに向かってくるのが見えた。
目を開けていられないほどの閃光、それに続く爆音と爆風。父とすぐ後ろにいた母とともにいきなり体が吹き飛ばされた。
何が起こったのかよくわからなかった。意識を失う直前に開いた目に映ったのは、周囲に倒れているたくさんの人と血だらけなのに幸せそうに笑っている両親が次第にぐったりとしていく様子。
思い出したくないのに忘れられない記憶。
あの日公園に落ちた隕石の破片は、着地すると同時にさらに細かく飛散し、爆風となって周囲にいた人々を襲ったらしい。公園にいた人のほとんどが死亡し、生き残ったのは俺を含めて数人だったと聞いている。
ほぼ無傷だった俺は奇跡と言われたが、両親も何もかも失ってしまった。
また嫌な夢を見てしまった。
ゆっくりと目を開けると、そこはまるで子供の頃アニメで見たような戦闘指令室そのままの雰囲気の場所。色とりどりのランプと複数のディスプレイが並んでいる。
俺は部屋の中央にある椅子の1つに座らされていた。両手両脚をベルトのようなもので縛りつけられているらしく身動きができない。首にも違和感を感じる。
直前の記憶が戻って来た。どうやら捕まってしまったようだ。周囲を見るが大悟はいない。あいつは大丈夫だったのだろうか?
「あら、もう目覚めたのね。うなされていたようだけど大丈夫?」
ベットの横にいた白衣の女性が喋り始めた。ふふっと微笑んだ顔は美しいだけに少し不気味さがただよっている。
「神代巧くん、はじめまして、かな。私は加賀美まどか」
初めて見る顔なのに声の調子、喋り方が知っている誰かに似ている気がする。不思議と敵意も感じない。
「強制的なAVRでコンタクトも考えたんだけど、実際に渡さなければならないものもあったし、ちょっと来てもらうことにしたの。ちょっと手荒になってごめんなさい」
「それにしても意外に単純なのね、巧くん。あんな書き込みに引っかかるなんて。まあ作戦を考えたアイミの勝ちなのかもしれないけど」
あの書き込みは罠だったのか?! じゃあ初めから狙いは俺? 一介の高校生を捕まえてどうするつもりだ。まさか世話になっている喬さんを強請るため?!
質問したかったが、まどかは話を続ける。
「あまり時間がないから、手短に説明するね。まず前方のディスプレイを見て」
ディスプレイには一人の女子高生らしき映像が映っている。美琴に似ている。
「そう彼女はあなたがよく知っている相馬美琴さんよ」
映像の中では、絶望したような美琴の周囲から黒い霧のようなものが発生している。
霧が建物に触れると灯りが失われていく。エネルギーを奪っていくように見える。そして霧に巻き込まれた人達もどんどん倒れていく。
さらに暗闇が広がり、黒い霧が画面を覆ったところで映像は終わった。
なんだ、これ?!
「詳しくは説明できないけど、神火島にある未来予測システム『ツクヨミ』が導き出した80%の確率で起こる、おそらく一週間後の事件をを映像化したものよ。被害予想は最低でも全島民の25から30%の死亡、及び島の全機能の50%以上の停止。その中心にいるのが相馬美琴さんなの」
「えっ? 何が起こったんですか」
「起こったんじゃなくて、これから起こる、かもなの」
頭をフル回転させているが、説明に追いついていかない。
「美琴は無事なんですか? 美琴に何があったんですか?」
「だから、まだ何も起こっていないわ。でも、これから何が起こるかを突き止めて、それを事前に阻止してほしいから、あなたに来てもらったというわけ」
これから起こる? 阻止してほしい? 何を言っているのだ、この人は。
「『ツクヨミ』はこの事件の対処方法として、いくつかのプランを提示してきたのよ。その一つがあなた、神代巧による事件の調査と対策の実行。阻止できる可能性67%と一番高いわ」
深呼吸してみる。『ツクヨミ』とかはよくわからないが、どうやら美琴の近くにいる俺にこれから起こる何かを調査して欲しいということみたいだ。
「そのために必要なものをちょっと首のところに埋め込んだわ」
さっきから感じていた首の違和感はそのせいか。
「しばらく絆創膏を剥がしちゃ駄目よ。手術が終わったばかりなんだから。でも害はないから心配しないで」
とウィンクしながら言うところはマッドサイエンティストっぽくて不気味である。
「それに最新型のAVRグラスⅢ型も渡すし、一人じゃ厳しいと思うので、アイミがサポートするわ」
「ハ~イ はじめましてアイミです。巧じゃ堅苦しいから、タッくんでいいよね。これからよろしくね、タッくん」
画面にツインテールの女子高生が現れて挨拶した。初対面なのになれなれしい。でも明るい声で好みの笑顔なので悪い感じはしない。
「いきなりな話ですぐに承諾できないと思うから、ゆっくり考えてね。じゃ、今日の話はここまで。続きはまた今度」
えっ? まだ訊きたいことがたくさんあるのに、という間もなく、再び顔にガスを吹き付けられ、意識は薄れていった。
もう一度目覚めてみれば、自室のベットの上だった。部屋の中には朝日が差し込んできている。
首筋に手を当てると絆創膏が貼られたままになっている。眠ったところを自室まで運ばれたことから推測すると、とんでもない組織に絡まれてしまったのかもしれない。
ベットの上でもう少し考えていたかったが、目覚まし時計が学校に行く時間を知らせてきた。
「やばい」
急いで着替えて1Fのダイニングへ。
テーブルの上にはトーストにベーコンエッグとサラダ、横に『寝ぼすけ!朝ごはんは、しっかり食べること!』と書かれたメモがあり、既に美琴の姿はなかった。既に朝練に出掛けた後のようだ。
そう俺と美琴は同居している。
隕石落下で両親が死亡した後、しばらく施設で暮らしていたが、父の仕事仲間であり親友だった相馬喬さんが現れて、一緒に暮らさないかと申し出てくれた。隕石落下後、しばらくして父の死を知り、ずっと俺を探してくれていたらしい。
奇跡の子といじめられる施設の暮らしにうんざりしていた俺は申し出をありがたく受け、ここ神火島にある相馬家にお世話になってから約半年が過ぎた
美琴は喬さんの養女である。幼い頃、近所だったため幼馴染みでもある。相馬家を初めて訪れた時に再会し、お互い本当に驚いた。
美琴も隕石落下で家族を失ったところを喬さんに救われ、養女になったと話してくれた。喬さんは俺にも養子にならないかと言ってくれたが、それは辞退している。
喬さんが多忙で普段留守がちなので、ほぼ美琴との二人暮らしになっている。でも美琴とは兄妹のように育ったせいか、残念ながら、それ以上の関係に発展する気配が全くない。
美琴に感謝しながら、まだ少し暖かいトーストを口に入れると、黒い霧に美琴が包まれていく映像を思い出した。本当に美琴に何かあるなら食い止めなければ。
まどかには「ゆっくり考えてね」と言われたが、最初から決まっていた。
「やれることをやるだけだ」
トーストの上にベーコンエッグを載せて、口の中に放り込んだ。
(つづく)